海辺にて
向かいのアパートの屋根に巣立ちの時を迎えた一羽の子雀がいた。
親鳥に追い立てられながらも、爪を立て、必死に屋根にしがみついていた。
今まさに飛び立とうとする空は陰鬱な鉛色で、押しつぶされそうなのかもしれない。
うたたねをしていたら群は去っていて、いつもの糸を張ったような静けさが戻った。
僕はといえば、海へまた汚いものを吐き出しに行ってきた。
流木とプラスチックゴミにまみれた汚いものは、むせ返るような熱気を持って、
波に押し返されるのだろう。
そうして僕の上に雫となってまた降り注ぐんだ。痛みに終わりはない。
子雀の初々しさに憧れて
我海にゆく
屑にまみれに