白磁の海

釉に漂う日々

誰かのためのもの

Untitled

僕の箱庭には窓が一つしかない。

その窓は丸くて、ちょうど僕の顔がすっぽり入る程度の大きさをしている。

僕はその窓から、恐る恐る外の世界を眺めている。

箱庭には僕しか存在しない。

僕の好きな本が棚に並べられ、好きな歌が流れている。

ふと気がつくと、本棚に見覚えのない本が置かれている。

本を手に取ってみると温かく、ずっと以前からそこにあったように思えた。

本を棚に戻そうとすると、新しい棚ができていた。

僕の本棚とは違う、鮮やかな色彩で塗装された本棚。

誰かのために用意されたものに、誰かの本を置く。

窓はもう一つ必要かもしれない。